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潜伏キリシタン関連遺産、国内22件目の世界遺産に

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2018年6月30日、ユネスコの世界遺産委員会が、日本の長崎・熊本両県にまたがる「潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録を正式に決定した、とのニュースがありました。

世界遺産への登録は、稀少性の高い地形や動植物保護の観点から審査される「世界自然遺産」、政治や宗教関連など歴史的に重要性のある人工施設を保存・伝承するための「世界文化遺産」の2種類あり、今回の潜伏キリシタン関連遺産は世界文化遺産への登録となります。

遺産群に含まれるのは、島原・天草の乱の主戦場となった「原城跡」、迫害を逃れた信徒たちがキリシタンであることを隠しながら密かに信仰を続けた「天草の津崎集落」などの各集落、現存する国内最古の教会として知られる「大浦天主堂」の全12件。

1549年、鹿児島に渡来したイエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルによって日本に根付いたキリスト教徒たちは、1614年に徳川幕府が発令した「禁教令」をきっかけに、およそ2世紀にも及ぶ苦難の時代を迎えました。

当時キリスト教徒は幕府への迎合をよしとせず、その一方で着実に版図を拡大しつつあったことから、これを脅威とみなした幕府によって弾圧の対象となったのです。

キリスト教には比較的寛容な態度を示していた西の大名や豊臣秀吉。だが、大阪冬の陣・夏の陣で豊臣方が敗北したこともその一因となり、宣教師の国外追放や教会の破壊など、キリシタンへの迫害は加速の一途をたどってゆきます。

そして1637年、あの有名な「島原・天草の乱」が勃発。

元々は重税に反発した長崎・熊本両県の農民による蜂起だったが、そこへ弾圧に苦しんでいたキリスト教徒たちが合流。

敬虔な信仰心と大勢力を有するキリスト教を拠り所とした農民たちは、若干16歳のキリシタン「天草四郎時貞」をリーダーにまつり上げ、ついには日本史上最大の内乱へと発展したのでした。

4万人近くまで膨れ上がった反乱軍は、長崎・南島原の原城を拠点に立て籠もり、幕府軍と約4カ月にも及ぶ激戦の末に敗北。

この反乱に参加した者は「生き残りを含めてほとんどが殺害された」と伝えられており、反乱終結の翌年、幕府は宣教師の来日を防ぐ目的で「鎖国政策」を開始します。

さらなる迫害を恐れたキリシタンは各地に逃げのびながら、ときには聖像の代わりに貝殻を信仰対象として見立てるなど、辛抱強く信仰を守り続けたのです。

<以下、筆者雑感>

現在日本の宗教といえば、仏教、神道、そしてカトリックの3大勢力が有力であるが、一部の敬虔な信徒たちを除いて、国民全員に宗教精神が広く根付いているかといえば、やや疑問が残ります。

特に若い世代に顕著であると思われますが、文明の発達によってもたらされた豊かな物質社会は、その代償として現実的な利害を追い求める実利主義を台頭させ、精神的な依り代である宗教への依存度を奪ってゆくものです。

「坊主丸儲け」などと揶揄されるような拝金主義の僧侶たちもちらほら目につき、それがまた宗教離れを加速させる要因になりかねないでしょう。

これは社会的に宗教の地位が高い海外では必ずしも当てはまるものではありませんが、宗教への公然とした批判や揶揄が許容されがちな現代日本の社会においては、文字通り身命を賭して教義に殉じようとした隠れキリシタンたちの悲劇の時代の物語は、大いに語り継がれるべき教訓であると言えるでしょう。

科学の力は偉大だが、宇宙どころかこの地球上の物事でさえ、今の科学力をもってしても未解明な部分が多いのです。

夏場の恐怖番組があたかも季節の風物詩のように番組欄に散見される現象は、人間がいかに「得体の知れないオカルティックな存在に畏敬の念を持ち続けているか」ということの証明とも言えます。

そしてその畏敬の念は、科学力が未発達であった頃の江戸時代のキリシタンたちと、なんら変わりないものなのです。

物質は豊かな暮らしをもたらしますが、それは人間の活動の大きな原動力となる「精神」を支えるには足りえません。

それどころか、物質的な過不足がときに精神不安を引き起こすことさえ、古今東西問わず事例に枚挙の暇がないのです。

哲学者ニーチェに、こんな名言があります。

「ある程度までの所有は自由をもたらすが、度を過ぎると所有が主人となり、所有者が奴隷となる」

現実的に所有し得ない神仏のような存在は、形にとらわれず幾様にも流動し得る精神活動の主体的な依り代となるものです。

そして抗いがたい自然の雄大さに人が身を委ねるのと同様、「大いなる存在の前に依存的な安心感を得ようとする」人間にとって、枠を持たない無限の信仰心は精神の安定をもたらすに適切な媒体となるのだ…と思います。

<参考・参照URL>

三省堂HP「キリスト教ハンドブック」
https://www.sanseido-publ.co.jp/publ/jesus_hdb_2.html

長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(長崎県運営HP)
http://kirishitan.jp/guides/636

日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3246706030062018MM8000/"